最近電車撮影で撮り鉄の気持ちが少し理解出来る様になった。
その矢先、山梨をＳＬ（Ｄ５１）が走ると聞いて、早速撮影に出掛けた。
Ｄ５１が現役で走れるのは、高崎所属の１台のみとなっているが、甲府−小淵沢間を５月末から６月初旬に４往復だけ走る計画である。
営業運転以来４５年ぶりにこの路線を走る『ＳＬやまなし号』という事で、乗車券発売と同時に完売し人気の程がうかがえた。
１日目（５月２９日）は絶景の俯瞰ポイントで撮影した。ここは有名なので、遠くは岡山からの撮り鉄もいて混雑していた。
黒煙を上げて走るＳＬを、皆無言で撮影していた。私も夢中でシャッターを切った。
２日目（５月３０日）は新府桃源郷で『ＳＬやまなし号』を待ち受けた。早朝５時前には現地でスタンバイ、１０時４５分の通過を待つのだけど、もう撮り鉄で
場所取り合戦がはじまっていた。
中央本線は色々な電車が通るので、待ち時間も飽きずに済んだが、撮り鉄の皆さんの楽しい会話にも助けられた。
遠くから、汽笛が鳴るのが聞こえる。はるか遠くに黒煙が上がり近づいて来るのが見える。わくわくして来る。
デゴイチが金属音を「ゴトン、ゴトン」とさせて目の前を通過して行く。目前で見ると、その重厚さに感激する。
『ＳＬやまなし号』のヘッドマークを捉えた。なんと桃とＤ５１のデザインだった。
可愛いと云えばそうだが、もう少し重厚の物を期待していたのは、私だけだったのかな。
また車輌ナンバーの文字プレートの背景は、今日はブルーだった。（初日の昨日は黒だったそうだ）
トンネルの多い路線走行の為、新たに取り付けられた集煙装置と除煙板がカッコ良い。
デゴイチが目の前をあっという間に過ぎ去って行くと、カメラマンや見物客も、あっという間に散っていった。
３日目（６月５日）は天気が良さそうだったので、八ヶ岳を背景にしたポイントを選んだ。かなり厚い雲に隠れていたが、晴れそうな期待を持ってＳＬを待った。
だんだん時間が近付いたが、ついに八ヶ岳は姿を見せなかった。
新緑の中、横を走る『ＳＬやまなし号』を望遠で捉えて見た。黒煙を上げて勾配を走って行く。運転手も乗客も楽しそうに見える。
木々の間を縫って、やがて開けたポイントにさしかかる。
「ボーーッ」と汽笛を鳴らして、この辺で一番人が集まっているポイントを走って行く。 見物の人が手を振ると、ＳＬの中の乗客も手を振って答えている。 本来なら背景に八ヶ岳がデンと見えるはずなのだが、今日は白い雲に覆われている。 だから余計に尾を引く黒煙が目立っていた。
『ＳＬやまなし号』は小淵沢駅に到着しても、転車台（蒸気機関車の向きを反転する台）がないので、甲府に戻る時は、
最後尾のディーゼル機関車（ＤＥ１０形）が先頭となり、Ｄ５１も反対のまま走って来る。
『ＤＬやまなし号』のヘッドマークには山梨県の地図が入ってるデザインだった。今度はＳＬの黒煙もない。
最後尾のＤ５１の文字プレートの背景色は、今日はグリーンになっていた。
デゴイチにはテールランプ代わりの赤い目玉が２つ目立っていた。
新府桃源郷の桃畑から、農家の家族が手を振って見送っていた。
今回は観光運転かもしれないが、沿線住民も楽しみにしているのが良くわかる。
最終の４日目（６月６日）は日野春駅手前の直線線路から狙って見た。
山間の上り勾配なので、煙も余計に出ている気もする。
最終日でもあり、車窓から振られる手も力強い気がする。
今日の文字板の背景色は赤い色だった。黒光する車体に、赤い色が目立つ。
蒸気機関車Ｄ５１と客車４両そして最後尾にディーゼルＤＥ１０形機関車の６両編成の『ＳＬやまなし号』がゆっくりと走って行く。
農作業の人達も、手を休めて見送る。
走り去るとＳＬ独特の石炭の煙が漂う。懐かしい匂いだ。少年時代にＳＬに乗り、トンネルに入ると一斉に窓を閉めた思い出が、頭をよぎる。
昔はのんびりとした旅だったのだなと思った。
『ＳＬやまなし号』は、走る先々で歓迎されていた。チョットした線路が見える所には、必ず人が出て見学していた。
ここ日野春駅先の踏切でも大勢の人が見送っていた。
だからＪＲ側も監視に余念がない。鉄道警察や、地元の駐在さんの交通巡視や、空からの県警ヘリの監視など、多くの人達の
努力も見逃せない。本当にこういう人達のお陰で無事４日間の運転が終了しようとしている。
最終日、甲府に向けて走る『ＤＬやまなし号』を、田んぼ越しに撮って見た。水田にＳＬが、かすかに映り込んでいる。
山梨のこの中央本線は、山間を縫う様に走り、山や林、それに水田地帯や麦畑、果樹園など変化に富んでいる路線である。
天気が良ければ、富士山や八ヶ岳、南アルプスなどの山々が車窓に広がるハズだったが、今回は少し残念だった。（背景の高い山は茅ケ岳）
せっかくだから良い天気で『デゴイチ』を迎えてあげたかった気もする。
２週間に渡るＳＬの追いかけ撮影も無事終わった。楽しい４日間だった。
風景写真ならじっくり撮れるのに、瞬間に通り過ぎる鉄道写真は難しいと思った。
今回のこのＪＲ東日本の企画が成功し、また中央本線にＳＬが走る事を期待したい。